(クアラルンプール発、2014年7月11日付より記事転載)
マレーシア中央銀行は10日開いた金融政策委員会で、市場の予想通り、
政策金利を0.25%引き上げて年3.25%にすると決めました。
中央銀行は2011年5月以来、金利を据え置いており、
利上げは3年ぶりとなります。
家計負債の増加と高まってきたインフレの抑制を目的としています。
2008年のリーマン・ショック以降、金融緩和の姿勢を打ち出してきた
同国の経済政策は転機を迎えたようです。
中央銀行は声明で「底堅い成長が見込まれ、物価上昇率が長期平均を
引き続き上回る中、MPC(金融政策委員会)は金融緩和策の調整を決定した」
と表明しました。
「金融政策の正常化により、わが国の経済における将来の成長を阻害する
広範な経済リスクや財政的不均衡を解消することも目指す」と説明しています。
同国の消費者物価指数(CPI)は5月に前年同月比3.2%上昇し、
昨年12月以降6カ月連続で政策金利を上回りました。
実質金利がマイナスという状況から家計債務が膨らんでいました。
景気が底堅く、利上げに十分対処できることも利上げの判断を促したとみられます。
1~3月期の経済成長率は前年同期比6.2%となり、13年10~12月期の
5.1%から加速しています。
直近でも、政府が今日発表した5月の鉱工業生産指数や4日発表の貿易統計
における輸出額などが、内需の堅調や欧米向け輸出の好調などを受けて、
市場予想を上回る伸びを示しています。
今回の処置は、インフレや資産バブル懸念が高まっており、
金融引き締めで景気過熱を抑制する狙いだと思われます。
インフレ時は抑制のために利上げを行い、デフレ時は利下げを行うのが
原則で、利息を上げれば、借り入れが以前より不利になり、投資を抑制していきます。
結果市場に出回る貨幣の量が減り、論理上、インフレの抑制につながるからです。
逆にデフレ時には利下げを行い借金をしやすくし、投資を喚起し、
市場に貨幣が出回りやすくします。日本はデフレ脱却のため
ゼロ金利を長期間続けていたのはことためです。
それでもデフレ脱却ができなかったため、アベノミクスで、
物理的に貨幣供給し、貨幣供給量(マネタリーベース)を大幅に増加させ、
インフレを誘導しています。
東南アジアや南米などの経済成長を続けている国は
インフレ抑制のため利上げを実施しており、
アメリカ、日本などは利下げしてゼロまで行き、
それでもさらにヘリコプターから札束を市場にばらまく政策を
実施しています。
また、マレーシアはリーマンショック時(金融危機)において、
各国、特に東南アジアなどの新興国の不動産が大幅に下げるなか、
マレーシアは国平均で10%程度しか下落しませんでした。
その後の持ち直しも早かったです。
経済の持続的な成長に対して、
マレーシア政府はよく取り組んでいると思います。
昨年から今年にかけて、
不動産への課税制度を部分改定、外国人に対する銀行融資率の引き下げ、
外国人の最低購入価格の値上げなど実施しており、そして、今回の発表が
ありました。それは過度な価格の上昇を防ぐためです。
経済成長時代に起こる物価インフレの流れに乗り、現物を保有する、
という基本的な投資の考え方、
不動産や土地などのアセットの長期保有という考え方になりますが、
不動産は需要と供給のバランスも価格に影響するため、
今後の需要と供給の見通し、不動産の種類、ロケーション、設備、価格帯、
流動性など、様々な観点で検討していくと、よりリスクが低くなると考えています。